拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「そうか。だったら、どうせ方向は同じなんだ。よかったら一緒に帰らないか?」
「はい、ぜひ」
 誘いを断る理由はなにもない。すぐに頷いて後片付けを済ませると、私は初めてファルザード様と並び立って孤児院を後にした。

 そうしてしばらく街路を歩き、間もなく東地区を抜けようかというところ。
 商店の店先に掛けられた数枚の姿絵、その中の一枚にハッとして思わず足を止めた。
「あれは、お姉様だわ」
 ラーラが私の声に反応し、腕にかけたバスケットの中からぴょこんと身を乗り出した。ラーラはバスケットの縁に前足を置き、伸び上がって私の視線の先を追っていた。その姿に、私は内心で小さく首を捻った。
 不思議ね、明らかに私の言葉が分かっているみたいな行動だわ。
「ほう。これは、先だって開催された隣国シリジャナとの国交樹立十周年記念式典の一幕か」
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