拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「はい。式典の一週間ほど前に王妃様のサロンに招かれたお姉様がたまたまピアノの演奏を披露したそうで。それを聴いた王妃様がいたく気に入って、式典の演者にお姉様を強く推薦してくださったとか。それで陛下からも指名をいただいて、急でしたが演奏することになったと聞いています」
『ニャー』
「ザイオン。口が悪いぞ」
 足もとでザイオンが低く鳴き、ファルザード様がそれを窘めるような言葉をかける。
 鳴き声にも、口がいいや悪いなんてあるのかしら?
 ファルザード様の言動を不思議に思って見上げていると、気づいた彼が苦笑いで口にした。
「おっと、すまん。こいつが悪態をついたように感じてな。きっと、足もとになにか気に食わん物でも落ちていたんだろう」
「まぁ、そうでしたか」
 長く飼っていると、鳴き声ひとつでそこまで通じ合うようになるのね。そう考えれば、ラーラが私の言葉や思いを汲んで動いているように見えるのも、まったくの見当違いでもないのかもしれない。
 納得した私は、さらに言葉を続ける。
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