拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 彼の積極的な態度から想像したら、胸にツキリと痛みが走った。
 おかしいわね。淑女の鑑のようなお姉様と、表舞台から距離を置いているとはいえ、完璧な貴公子のファルザード様。ふたりは文句の付けどころのない、お似合いのカップリングだ。
 その彼がお姉様の心を得んと望むなら、諸手を挙げて応援したらいい。それなのに、胸の奥深いところが妙にざわざわして落ち着かないのはなぜなのか。
「……なぁ、ティーナ。俺がこんなことを言うと不可解に思うかもしれないが、君は少し姉君と距離を置いてみてもいいのかもしれん」
 ひとしきりお姉様のことを話した後で、ファルザード様に告げられた唐突な言葉に目をしばたたく。
「え?」
「いや、出張ったことを言っている自覚はあるんだ。ただ、俺の目から見ると、君は姉君に対して少し精神的な密着が強いように思ってな。君がいかに姉君を慕っているのかは分かるのだが、行きすぎれば双方にとって益にならない」
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