キラキラ王子様系男子の秘密を知ったら実はアブナイオオカミでした?!
「さて、今日はマカロンを作ります!」
「おお〜!」
私は立ち上がる。と、ふらっとしてしまう。…まずい。ご飯あんまり食べてないからかな。
「大丈夫?!ちゃんと朝ごはん食べた?」
先輩が私を焦りながら見る。
「それが……」
私はしどろもどろになりながら指をつんつんした。すると、悠斗が
「もーう…」
と、粉スープを作り渡してくれる。
「これ飲んでからね」
「すみません…」
あああ、恥ずかしい…。けど、優しいな。スープを飲みながら隣にいてくれる先輩を見る。…やっぱりかっこいい。エプロンを付けている姿も、とても絵になるなあ、と感じる。
「何?」
「ううん」
言うのは恥ずかしい。でも、先輩の家でこの距離で先輩といられるのはやっぱりドキドキしてしまうなあ。それから、ちゃんと元気になった私はエプロンをつけて先輩と並ぶ。
「まずは、このパウダーと砂糖をふるってくれる?」
「はい!」
先輩は卵白を混ぜている。ハンドミキサーだ。家になかったからまじまじと見つめる。そしてメレンゲができあがる。
「今日はピンクにします」
先輩が食用色素を入れる。すると、メレンゲの色がピンクに変わっていく。そこにふるった粉を入れる。その生地をまとめる。
「この作業、マカロナージュって言うんだって。かわいいよね」
「マカロナージュ…!かわいいです」
そして絞り袋に入れて、ガイドラインにそって絞っていく。それを私もやらせてもらう。プルプル震えながらしていると
「あっ、はみだした!」
「あはは、大丈夫だよ」
私は自分の不器用さを呪った。私が絞ったとこだけ歪じゃない?!
「はい、おっけー。これを、焼きま〜す」
先輩はそれをオーブンに入れる。
「この間にガナッシュ作るよ〜」
チョコレートと水飴と生クリーム。まず、チョコレートを溶かす。そして、水飴と生クリームをまぜて、冷やす。しばらくテレビを見て待っていると、
「焼きあがったみたい」
と先輩が焼きあがったものを取り出す。
「これは、マカロンコックといいます」
「へえ〜」
「お〜、かたまった」
ガナッシュも無事固まり、絞り袋に入れる。マカロンコックに絞り、もう一個のマカロンコックを乗せる。
「…!マカロンだ!」
私はとてもテンションがあがった。お店でしか見たことない。マカロンがそこにあった。
「はい、完成」
キラキラして見える先輩と作ったマカロン。しかもとても美味しそうだ。甘い香りが漂う。
「ありすに持って帰る?」
「はい!」
「じゃあ、袋に入れようね」
先輩が可愛い袋を取り出す。見ると、たくさんの種類があった。本当に可愛いの好きなんだなあ。
「はい。じゃあ、向こうで食べよっか」
「わああ!やったあ」
テレビの前の机に移動する。先輩はオレンジジュースを入れてきてくれた。
「誰かとお菓子作ったのは初めてだよ、ありがとうね」
「私も初めてです!」
いただきます、とマカロンを口に入れると、さくふわぁ、と幸せの味が広がる。
「……!美味しい」
「良かった」
私の顔を見つめる先輩の顔がとても優しい。
「毎日こうだったらいいのにね」
先輩がぼそっと呟いた。その言葉が聞こえてしまった私は真意がわからなくてすごく困る。何も返せない。私もそう思ったけど、だって、それって。
一緒に住みたいっててこと?
「ごちそうさまでした」
マカロン沢山食べられて先輩と過ごせて、今日は幸せだなあ、とか考えていると、先輩からも甘い香りがしてくる。マカロン作ったからかなと思っていたが、なんだかちがう。これは、フェロモンだ……!
「先輩……?」
「う……なんだか抑えきれてないみたいだ」
「これ……」
今のフェロモンは強すぎて、私もたすがに耐えきれない。満月の夜のようだ。ふわふわして、先輩のことしか考えられない。
「……先輩……」
私は先輩と向き合い、そう呟いた。瞳がなんだか濡れてしまう。気持ちが溢れそうになる。
「輝、すまない……」
そう言う先輩を抱きしめたくなる。…いいんだろうか。悩んでいたらチャンスを逃す気がして、今は、考えることを放棄することを選んだ。私は、先輩をぎゅっと抱きしめる。
「これは、フェロモンのせいですからね」
そう呟いて、先輩の体の温度を感じていた。
私は先輩が好き……なんだろうか。特別だとは感じる。それをとても知りたいそう思った。