Hush night
恨めしげにやんわりと睨むと、麗日はわたしの髪に触れながら平然と言う。
「やっぱ、洗い物は後でいっか」
そのままわたしを台所で押し倒そうとするものだから、ふるふると首を横に振って抵抗する。
「……だ、だめ」
「ヤダ」
「洗い物、……しなきゃ、」
「後でするって」
「で、も……っ」
胸が苦しいから、やめてほしい。
ドキドキしすぎて辛いから、止まってほしい。
そんなわたしの気持ちなんてわかっていると言うように、麗日は小さく笑う。
「俺、うるの嫌がることは絶対しねえよ。いま本当に嫌なら、逃げてみな?」
わたしの身体に回っていた麗日の腕の力が緩む。
それをわかっていながら、わたしは逃げ出そうだなんて思えない。
……本当は嫌じゃないって、見透かされているのだから。