Hush night
「……逃げねえの?」
喉を鳴らす麗日は、わたしに自由を与えながらも、逃す気など毛頭ない。
そのくせわたしは、自由を与えられながらも、拒もうとなんて思わない。
ある意味わたしたちは似た物同士なのかもな……だなんて呑気に考えていると、気づいたときには天井が視界に広がっていた。
ひやりとした床が、熱い身体にちょうどいい。
「……ちょっと、だけなら」
やっぱり言葉足らずのわたしを、麗日は温かく包み込んでくれる。
彼の表情には嬉しさが滲んでいたけれど、少し意地悪な笑みも浮かんでいた。
「ちょっとで止めれるかはわかんねえけどな」
思わずクラッとしてしまったのは、彼の甘い煙草の香りが鼻を掠めたから。
ただ、それ以上の理由はないと自分に言い聞かせるのだ。