Hush night
柔い泡沫
☽
「れ、麗日……」
「ん、なに?」
「もうすこし……離れて、ほしい、」
「あー無理。俺だって、大事なうるを、本当は男だらけの巣窟に連れて行きたくねえんだよ」
そう言われてしまえば、何も反論出来なくなる。
少しばかり不機嫌な麗日は、あまり刺激するべきじゃないとわたしの本能が言っている。
事の発端は、約1時間ほど前。
いつものように麗日の部屋で午前は過ごし、お昼になった頃、彼が仕事に行くと言い出した……んだけれど。
『仕事行きたくない』
『で、でも……行かないと、だめ、なんでしょう?』
『ヤダ。うると離れたくない』
なんて駄々をこねるものだから、どうしたものか……と頭を抱えていたとき。
弾さんが麗日を呼びにきて、麗日が微動だにしないことから、わたしたちの状況を理解したのだろう。
『……麗日。お前が来ねえとなんも始まらないんだけど?』
『あ? いまお取り込み中だから遅れるってことにしときゃあいいんだよ』
『女にうつつ抜かしてるからレイは遅れます、だなんて誰が言えるかよ』
『弾』
『真顔で言うな』
額に青筋を浮かべながら弾さんは、麗日と冷戦を繰り広げ始めてしまい。
ああ、どうしよう……と考え込んだあと、ひとつアイデアが浮かんだのだ。