Hush night

柔い泡沫








「れ、麗日……」

「ん、なに?」


「もうすこし……離れて、ほしい、」

「あー無理。俺だって、大事なうるを、本当は男だらけの巣窟に連れて行きたくねえんだよ」



そう言われてしまえば、何も反論出来なくなる。

少しばかり不機嫌な麗日は、あまり刺激するべきじゃないとわたしの本能が言っている。



事の発端は、約1時間ほど前。

いつものように麗日の部屋で午前は過ごし、お昼になった頃、彼が仕事に行くと言い出した……んだけれど。


『仕事行きたくない』

『で、でも……行かないと、だめ、なんでしょう?』


『ヤダ。うると離れたくない』


なんて駄々をこねるものだから、どうしたものか……と頭を抱えていたとき。


弾さんが麗日を呼びにきて、麗日が微動だにしないことから、わたしたちの状況を理解したのだろう。


『……麗日。お前が来ねえとなんも始まらないんだけど?』

『あ? いまお取り込み中だから遅れるってことにしときゃあいいんだよ』


『女にうつつ抜かしてるからレイは遅れます、だなんて誰が言えるかよ』

『弾』


『真顔で言うな』



額に青筋を浮かべながら弾さんは、麗日と冷戦を繰り広げ始めてしまい。

ああ、どうしよう……と考え込んだあと、ひとつアイデアが浮かんだのだ。

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