Hush night


「ああ、全部わかっていて騙されていた」



……うそだ、と思った。

だって、そんなの、聞いていない。


でも、麗日が時折見せた切ない顔や不安な声を思い出す。



麗日は、自分を貶めようとしているわたしを、自ら拾ったということ……?

そして、そんなわたしに優しくしてくれて、大きな愛をくれたということ……?



……あり得ない。

そんなの、あるわけない。



麗日は、どうしてそれほどまでにわたしを温かく包んでくれるのか。

それがどうしたってわからなかった。



唖然としているのは兄も同じで、未だに動揺を隠せないまま麗日に尋ねた。



「そんなの、何のために……っ」


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