Hush night
> 麗日SIDE
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物心をついた頃には父も母もいなかった。
というのもシングルマザーだった母親は早くに亡くなり、近くに親戚もおらず、俺は養護施設で育ったからだった。
とにかく毎日つまらない人生を過ごし、ただ日が沈んでいくのをぼーっと眺めて生きていた。
施設に友達と呼べる人は、弾くらいだったと思う。
『麗日って名前、珍しいけどかっこいいな』
人と関わるのが嫌で、誰ともつるむことなく独りで生きていたある日。
施設にやって来た弾は、今も変わらない胡散臭い表情でそう言ってきたのを覚えている。
10歳やそこらだったけれど、弾と自分は同じような空気を纏っているなと思った。
現実を諦観しているのは俺らだけだったとも言えるのかもしれない。
母親は病気で他界したというのは施設の人から聞いたけれど、だからといって、施設で育った記憶しかほとんど残っていないのは寂しかったのだと自分で思う。