Hush night
『麗日ってさ、将来どーすんの?』
12歳になった頃だろうか。
弾が珍しく辛気臭い表情でそう尋ねてきた。
俺も弾も学校では成績は普通、運動は飛び抜けて出来たけれど、それだけじゃ生きていけない。
無条件に甘えられる両親ともにいない施設育ちの人間に、将来のことを考える機会は毎日のように巡っていた。
施設を出て、どうやって生きていくのか。
特にやりたいこともないおかげで、それは最大の悩み事だった。
弾も同じだったのだと思う。
今考えれば、俺に聞いてきたのは間違っていたと思うけれど。
『飯食って風呂入って、まあ普通に生きていけたらいいんじゃね』
『だから、それはどうやって?』
『さあ、なるようになるんじゃねーの』
『……麗日ってそーいうとこあるよな』