Hush night

突如甘くなった麗日の声に、その場にいた全員がこちらを見た気配がした。

注目を浴びつつも小さく頷くと、彼はわたしの手を取って悠々とエレベーターへと向かう。


「あ、帰る前に買い物するから、いまから欲しいもの考えておけよ」


こくりと頷き、麗日を見る。

さきほどまでの光のない瞳ではなくて、いまの彼の瞳はわたしだけを映していた。


「そんで帰ったらふたりきり。やっとうる補給できるわ」

「ほ、補給……」


「んーそう。まじうるが足りねえ」



エレベーターに乗り込み、わたしを後ろから抱きしめてくる麗日。

周りにはたくさんの人がいるというのに、大胆な人だと思う。


少し恥ずかしいけれど、こうやって特別だとでも示すような行動は嬉しかったりする。


心が満たされながら、されるがままになる。


弾さんは呆れたように、エレベーターが閉まる直前、麗日に声をかけた。


「俺も一応麗日のお目付役なんだから、先に車出すなよ」

「弾が、隣でうると俺がいちゃついててもいいなら考えてやるよ」


「かなり、というか心底嫌だけど我慢するしかねえわ」

「じゃ、先降りてるわ」


「ハイハイ……」