Hush night
愛せば苦脳
☽
「うる、欲しい服どれ?」
「……」
「わかんない? 一旦全部買うか?」
「だ、だめっ……」
金銭感覚のおかしい麗日を慌てて引き留め、頭を悩ませる。
麗日に連れて来てもらったのは、彼の顔見知りが経営しているらしい高級ブランド店。
店に入るなり煌びやかな雰囲気に気圧され、さらに並んでいる衣服にふと目をやると、その金額の高さに息を呑んでしまったのだ。
ゼロの数が異次元……、と呆気にとられていたのだけれど。
そのわたしの様子を、どれにしようかと悩んでいると勘違いした彼は、先ほどのような発言をしたということになる。
全部買うだなんてあり得ないことを、平然と言ってくる辺り、やっぱり麗日は計り知れない。
「こんな高級な服……わたしには、もったいない、です……」
初めてこんなに話したんじゃないかと思いつつ、でもそれくらい遠慮の気持ちが大きかった。
麗日にここまでしてもらう恩がない。
果たしてその対価を払えるかと思えば、絶対に返せない。
俯いて呟いたわたしに、麗日は優しい瞳でわたしの顔を覗き込んできた。
「じゃ、俺が選んでいい? それなら勝手に俺が買ったことになるだろ」
「……、でも、」
「うるはもっと自信持ちな。“わたしなんか”は禁句だから」
「うる、欲しい服どれ?」
「……」
「わかんない? 一旦全部買うか?」
「だ、だめっ……」
金銭感覚のおかしい麗日を慌てて引き留め、頭を悩ませる。
麗日に連れて来てもらったのは、彼の顔見知りが経営しているらしい高級ブランド店。
店に入るなり煌びやかな雰囲気に気圧され、さらに並んでいる衣服にふと目をやると、その金額の高さに息を呑んでしまったのだ。
ゼロの数が異次元……、と呆気にとられていたのだけれど。
そのわたしの様子を、どれにしようかと悩んでいると勘違いした彼は、先ほどのような発言をしたということになる。
全部買うだなんてあり得ないことを、平然と言ってくる辺り、やっぱり麗日は計り知れない。
「こんな高級な服……わたしには、もったいない、です……」
初めてこんなに話したんじゃないかと思いつつ、でもそれくらい遠慮の気持ちが大きかった。
麗日にここまでしてもらう恩がない。
果たしてその対価を払えるかと思えば、絶対に返せない。
俯いて呟いたわたしに、麗日は優しい瞳でわたしの顔を覗き込んできた。
「じゃ、俺が選んでいい? それなら勝手に俺が買ったことになるだろ」
「……、でも、」
「うるはもっと自信持ちな。“わたしなんか”は禁句だから」