宿り木カフェ
*********
私はずっとリュウさんの言葉が気になっていた。
彼は本当に私を狙っていたのだろうか。
知りたい。
結局私はその欲求に勝てなかった。
久しぶりのデート。
いつものように食事をし、ホテルに入った。
彼から降り注ぐ口づけを味わったあと、私は切り出した。
「実は聞きたいことがあるの」
私の真面目な顔と声に彼はきょとんとしたあと、お互い並んでソファーに座る。
私は少し俯いた後、意を決して彼を見た。
「あのね?最初の時、ゴム持っていたよね?それは何故?
もしかして・・・・・・私を狙っていたり、したの?」
最後、怖くなって目を彼から背けてしまった。
気のせいだ、自意識過剰だと言われるのが怖くなったのだ。
だけど少し時間をおいて、笑い声が聞こえる。
私は驚いて彼を見た。
「なんだ、てっきり俺の気持ちを知っていたものと」
目を見開く。
どういう事だろう。
「え、気持ち?
もしかしてあの夜よりずっと前からってこと?」
「そうだよ」
「じゃ、じゃぁあのプロジェクトに選抜されたのは・・・・・・」
「それは勘違いしないでくれ。
仕事はプロ意識を持ってやるよういつも言っているだろう?
まぁ2回目の出張は完全に自分の下心で泊まれるように日程を組んだだけ。
そもそも君の仕事の部分は切り離していたよ。
そして最初のプレゼンは君だからこそ任せたんだ。
出張で泊まることに決まったときは、あわよくばと思っていたことは認めるよ」
にっこりとそう言い放った彼を呆然と見る。
全てリュウさんの言ったとおりだった。
急に、もしかしてリュウさんが彼なのではと思えてくるほど重なってくる。
じっと彼を見つめていたら、彼の目が細まった。
「で、君にそんな事を吹き込んだのは誰?」
「えっ・・・・・・」
「今まで何も疑問に思っていなかった君が、突然そんな事を言ったんだ。
誰かに指摘されたんだろう?
で、そんな事を君が信頼して話すことが出来る相手、男だね?
それをそんな風に指摘できる男って俺の知ってるやつ?」
「あ、その」
「なんだか嫌な感じがするんだよなぁ。
相当心から信用しきっているだろう?その男の事を。
そうじゃなきゃいつも慎重な君が誰かに話すわけが無い」
「あ、あの」
「さて、今からじっくり吐いてもらおうか、俺の知らないその男の事を」
彼はにっこりと微笑んでいる。
ゆっくりと近づく彼の顔を見ながら、全身の血の気が引く音が聞こえた。