【シナリオ版】仮面公爵の素顔は溺愛する令嬢のみぞ知る
第2話
○回想続き・黒町家屋敷のある一間(夜)
江芭、目を見開いて久仁和を見つめている。
江芭М「仮面の公爵様が、私と結婚してくださると言うの?」
江芭「ほ、本当なんですか?」
久仁和「ああ。嘘ではない。まことの話だ」
江芭「でも私には喘息が……子が産めるかどうかもわからないですし」
久仁和「それなら安心しろ。黒町家の財力にかかればその程度どうという事は無い」
久仁和、江芭の左手を取る。
久仁和「俺は貴様に惚れた。俺の妻になれ。いいな?」
江芭、口をぎゅっと結ぶ。
江芭M「相手はあの公爵様。白い仮面が怖くないと言われたら嘘になる。でも……」
久仁和「この仮面が怖いのか?」
江芭「!」
江芭、目を大きく見開き冷や汗を頬から流す。
江芭M「まるで見透かされているみたいだ」
久仁和「貴様は分かりやすいな。なら、こうしよう」
江芭「?」
久仁和「貴様が俺と結婚してくれるなら、この仮面を外そう。ただし、2人っきりで俺と子作りしてくれるならという条件付きだがな」
江芭「なるほど……」
江芭M「やはり子供は求められるか。でも、公爵家である黒町家の財力なら……それに仮面を取ってくれると言うのなら、引き受けるしかないか。ここでこの縁談を破棄するのはさすがに得する事ではない」
江芭「わかりました。お引き受けいたしましょう」
久仁和、数秒間無言で江芭の瞳を見つめる。
久仁和「本当だな?」
江芭「はい。あなたと結婚します。それにお相手としても申し分ないでしょうから……」
久仁和「わかった。では明後日式を執り行おう」
江芭「あ、明日ですか? そんな急に……!」
久仁和「早ければ早いほど良い。別に貴様の家族はいなくても問題ないだろう?」
江芭M「確かに薫はいない方が助かるけど……」
久仁和「では決まりだ。よろしく頼むぞ、我が妻よ」
久仁和、江芭の右手を取り手の甲に仮面越しにキスをする。
回想終了
〇黒町家屋敷大広間(夜)
広間には着物姿の参列客がずらりと左右に分かれて座っている。
江芭M「それにしても、急にどうして……」
江芭、ちらりと横目で久仁和を見る。久仁和は目を合わせようとせず、表情は分からない。式は滞りなく進む。
司会「では新郎新婦に神酒を」
江芭、招待客を一瞥する。そこに両親の姿はいない。
江芭M「急だったもんね、さすがにこれないか……」
紋付きの着物を着た女中、江芭に白い器に入った神酒を手渡す。
江芭M「これを飲むのね」
司会「ではお飲みください」
久仁和と江芭、同時に神酒を飲み干す。
久仁和「ふうっ……」
江芭、久仁和の横顔を見つめる。
江芭M「なんだか色っぽいかも……仮面の下がますます気になる」
久仁和「どこを見ている」
江芭「えっ」
久仁和「そんなに仮面の下が気になるのか?」
江芭M「そりゃあ、気になるけど……」
式が進み、披露宴に向けて一旦江芭は大広間奥の個室に女中と共に移動する。
〇黒町家屋敷大広間奥の個室(夜)
江芭、女中3人の手により着替えと化粧直しを受ける。
江芭M「黒町様は色っぽい顔つきをしていたように見えた。それにしてもなぜ仮面をつけているのか、そして私と結婚しようとしたのか気になって仕方がない」
江芭M「出来れば、両親にはこの場に来てもらいたかったな……薫はいいや」
女中A「出来ました。鏡でご確認お願いします」
江芭「ありがとうございます」
江芭、鏡で自身の化粧を確認する。
江芭「これで大丈夫です。ありがとうございます」
女中A「わかりました。まだ披露宴までお時間がございますので、こちらで待機してくださいませ」
江芭「はい」
ここで久仁和が個室に入室してくる。
久仁和「どうだ。終わったか?」
女中A「終わりました。旦那様」
久仁和「そうか。やはり綺麗だな」
江芭M「やはり……?」
久仁和、振り返ってその場から立ち去ろうとする。江芭、久仁和を制止する。
江芭「お待ちください。あの、以前から私を知っておいでで?」
久仁和「俺を誰だと思っている。令嬢くらい把握して当然だろう」
江芭M「た、確かにそうか……」
久仁和「では、また会おう」
久仁和、そのまま立ち去っていく。
江芭M「なんだか、不思議な感覚がするなあ……」
〇黒町家屋敷大広間(夜)
お祝いの食事が乗ったお膳が1人ずつ女中達の手で運び込まれ用意されていく。江芭の元にもお膳が運ばれ、配置される。
司会「では皆様、お召し上がりください」
招待客らが一斉に食事を始める。江芭も鯛の煮つけに箸を伸ばし、1口頂く。
江芭「美味しい……」
江芭M「そういえば、黒町様のご両親はもうお亡くなりになっていらっしゃるんだっけか。それであの方が若くして当主になられた。それにしてもどうして私? ほかにも令嬢はいるでしょうに、もしかして中々縁談がまとまらないから……?」
江芭、黙々と食事を食べ進める。
久仁和「江芭」
江芭「なんでしょう?」
江芭、久仁和の方を向く。久仁和、白い徳利を左手に持っている。
久仁和「酒は飲むか? 無理はしないでいいぞ」
江芭M「あまりお酒は得意ではないけれど……せっかくの披露宴の場だし少しくらい飲んだ方が良いか」
江芭「じゃあ少しだけ。実はあまり得意ではないので」
久仁和「わかった」
江芭、お膳の右上に置かれたおちょこを久仁和に向ける。久仁和、徳利の中に入ったお酒を江芭が持つおちょこにほんの少しだけ注ぐ。
久仁和「これくらいで大丈夫か?」
江芭「はい、ありがとうございます」
江芭M「優しい所もあるんだな」
久仁和「まだ披露宴は長い。もし体調が悪くなったら早めに言うんだ。いいな?」
江芭「はい、お気遣いありがとうございます」
江芭M「優しいな……」
招待客が踊りだしたり歌を歌い始める。大広間は酒に酔った招待客によりどんちゃん騒ぎになる。
招待客A「やーーれ、やれ、そいそい!」
招待客B「あーーハレの日にゃあ花嫁の着物ははればれとぉ」
招待客と女中達「わはははははは」
久仁和、そのどんちゃん騒ぎの様子を見て仮面越しにふふっと笑う。
江芭M「そういえばこの招待客の人達、皆議員の人か軍人か華族の人達じゃない。今更だけど。それだけ黒町家はすごいって事なのね……」
江芭、上段から招待客や女中達をぼんやりと見渡す。
〇黒町家屋敷・寝室(夜)
畳敷きの寝室には白い布団が敷かれてある。江芭、女中の先導により先に寝室に到着する。
女中「奥様。旦那様が入りましたら座礼をして夜のお務めに参った事を挨拶してください」
江芭「わかりました」
久仁和が仮面をつけたまま寝室に入る。江芭、女中と共に久仁和へ座礼する。
江芭「お疲れ様で……ございます。夜のお努めに参りました」
久仁和「ご苦労。女中は下がれ」
女中「かしこまりました」
女中、寝室から退室する。
久仁和「さて。せっかくだ。抱く前に貴様の質問に答えるとしよう」
江芭M「なんだろう、もうわかってやってる感じが……じゃあ」
江芭「どうして私を選んだのです? 令嬢など他にもたくさんいるでしょう」
久仁和「……そういうと思った。結論から言うと俺は貴様が欲しかったんだ。ああ、貴様の縁談はな、断るように指示していたのは紛れもなく俺だ」
江芭「……え」
江芭、目を見開いて久仁和を見つめている。
江芭М「仮面の公爵様が、私と結婚してくださると言うの?」
江芭「ほ、本当なんですか?」
久仁和「ああ。嘘ではない。まことの話だ」
江芭「でも私には喘息が……子が産めるかどうかもわからないですし」
久仁和「それなら安心しろ。黒町家の財力にかかればその程度どうという事は無い」
久仁和、江芭の左手を取る。
久仁和「俺は貴様に惚れた。俺の妻になれ。いいな?」
江芭、口をぎゅっと結ぶ。
江芭M「相手はあの公爵様。白い仮面が怖くないと言われたら嘘になる。でも……」
久仁和「この仮面が怖いのか?」
江芭「!」
江芭、目を大きく見開き冷や汗を頬から流す。
江芭M「まるで見透かされているみたいだ」
久仁和「貴様は分かりやすいな。なら、こうしよう」
江芭「?」
久仁和「貴様が俺と結婚してくれるなら、この仮面を外そう。ただし、2人っきりで俺と子作りしてくれるならという条件付きだがな」
江芭「なるほど……」
江芭M「やはり子供は求められるか。でも、公爵家である黒町家の財力なら……それに仮面を取ってくれると言うのなら、引き受けるしかないか。ここでこの縁談を破棄するのはさすがに得する事ではない」
江芭「わかりました。お引き受けいたしましょう」
久仁和、数秒間無言で江芭の瞳を見つめる。
久仁和「本当だな?」
江芭「はい。あなたと結婚します。それにお相手としても申し分ないでしょうから……」
久仁和「わかった。では明後日式を執り行おう」
江芭「あ、明日ですか? そんな急に……!」
久仁和「早ければ早いほど良い。別に貴様の家族はいなくても問題ないだろう?」
江芭M「確かに薫はいない方が助かるけど……」
久仁和「では決まりだ。よろしく頼むぞ、我が妻よ」
久仁和、江芭の右手を取り手の甲に仮面越しにキスをする。
回想終了
〇黒町家屋敷大広間(夜)
広間には着物姿の参列客がずらりと左右に分かれて座っている。
江芭M「それにしても、急にどうして……」
江芭、ちらりと横目で久仁和を見る。久仁和は目を合わせようとせず、表情は分からない。式は滞りなく進む。
司会「では新郎新婦に神酒を」
江芭、招待客を一瞥する。そこに両親の姿はいない。
江芭M「急だったもんね、さすがにこれないか……」
紋付きの着物を着た女中、江芭に白い器に入った神酒を手渡す。
江芭M「これを飲むのね」
司会「ではお飲みください」
久仁和と江芭、同時に神酒を飲み干す。
久仁和「ふうっ……」
江芭、久仁和の横顔を見つめる。
江芭M「なんだか色っぽいかも……仮面の下がますます気になる」
久仁和「どこを見ている」
江芭「えっ」
久仁和「そんなに仮面の下が気になるのか?」
江芭M「そりゃあ、気になるけど……」
式が進み、披露宴に向けて一旦江芭は大広間奥の個室に女中と共に移動する。
〇黒町家屋敷大広間奥の個室(夜)
江芭、女中3人の手により着替えと化粧直しを受ける。
江芭M「黒町様は色っぽい顔つきをしていたように見えた。それにしてもなぜ仮面をつけているのか、そして私と結婚しようとしたのか気になって仕方がない」
江芭M「出来れば、両親にはこの場に来てもらいたかったな……薫はいいや」
女中A「出来ました。鏡でご確認お願いします」
江芭「ありがとうございます」
江芭、鏡で自身の化粧を確認する。
江芭「これで大丈夫です。ありがとうございます」
女中A「わかりました。まだ披露宴までお時間がございますので、こちらで待機してくださいませ」
江芭「はい」
ここで久仁和が個室に入室してくる。
久仁和「どうだ。終わったか?」
女中A「終わりました。旦那様」
久仁和「そうか。やはり綺麗だな」
江芭M「やはり……?」
久仁和、振り返ってその場から立ち去ろうとする。江芭、久仁和を制止する。
江芭「お待ちください。あの、以前から私を知っておいでで?」
久仁和「俺を誰だと思っている。令嬢くらい把握して当然だろう」
江芭M「た、確かにそうか……」
久仁和「では、また会おう」
久仁和、そのまま立ち去っていく。
江芭M「なんだか、不思議な感覚がするなあ……」
〇黒町家屋敷大広間(夜)
お祝いの食事が乗ったお膳が1人ずつ女中達の手で運び込まれ用意されていく。江芭の元にもお膳が運ばれ、配置される。
司会「では皆様、お召し上がりください」
招待客らが一斉に食事を始める。江芭も鯛の煮つけに箸を伸ばし、1口頂く。
江芭「美味しい……」
江芭M「そういえば、黒町様のご両親はもうお亡くなりになっていらっしゃるんだっけか。それであの方が若くして当主になられた。それにしてもどうして私? ほかにも令嬢はいるでしょうに、もしかして中々縁談がまとまらないから……?」
江芭、黙々と食事を食べ進める。
久仁和「江芭」
江芭「なんでしょう?」
江芭、久仁和の方を向く。久仁和、白い徳利を左手に持っている。
久仁和「酒は飲むか? 無理はしないでいいぞ」
江芭M「あまりお酒は得意ではないけれど……せっかくの披露宴の場だし少しくらい飲んだ方が良いか」
江芭「じゃあ少しだけ。実はあまり得意ではないので」
久仁和「わかった」
江芭、お膳の右上に置かれたおちょこを久仁和に向ける。久仁和、徳利の中に入ったお酒を江芭が持つおちょこにほんの少しだけ注ぐ。
久仁和「これくらいで大丈夫か?」
江芭「はい、ありがとうございます」
江芭M「優しい所もあるんだな」
久仁和「まだ披露宴は長い。もし体調が悪くなったら早めに言うんだ。いいな?」
江芭「はい、お気遣いありがとうございます」
江芭M「優しいな……」
招待客が踊りだしたり歌を歌い始める。大広間は酒に酔った招待客によりどんちゃん騒ぎになる。
招待客A「やーーれ、やれ、そいそい!」
招待客B「あーーハレの日にゃあ花嫁の着物ははればれとぉ」
招待客と女中達「わはははははは」
久仁和、そのどんちゃん騒ぎの様子を見て仮面越しにふふっと笑う。
江芭M「そういえばこの招待客の人達、皆議員の人か軍人か華族の人達じゃない。今更だけど。それだけ黒町家はすごいって事なのね……」
江芭、上段から招待客や女中達をぼんやりと見渡す。
〇黒町家屋敷・寝室(夜)
畳敷きの寝室には白い布団が敷かれてある。江芭、女中の先導により先に寝室に到着する。
女中「奥様。旦那様が入りましたら座礼をして夜のお務めに参った事を挨拶してください」
江芭「わかりました」
久仁和が仮面をつけたまま寝室に入る。江芭、女中と共に久仁和へ座礼する。
江芭「お疲れ様で……ございます。夜のお努めに参りました」
久仁和「ご苦労。女中は下がれ」
女中「かしこまりました」
女中、寝室から退室する。
久仁和「さて。せっかくだ。抱く前に貴様の質問に答えるとしよう」
江芭M「なんだろう、もうわかってやってる感じが……じゃあ」
江芭「どうして私を選んだのです? 令嬢など他にもたくさんいるでしょう」
久仁和「……そういうと思った。結論から言うと俺は貴様が欲しかったんだ。ああ、貴様の縁談はな、断るように指示していたのは紛れもなく俺だ」
江芭「……え」