世界で1番泣き虫なキミを愛し続けると誓う
***

ずっと手を繋いで回った館内。

イルカも。アザラシも。

名前も知らない小さな魚達も。

なんだか朧気で。

記憶に1番残っているのは、水槽に反射する結星くんの顔な気がする。


「イルカ可愛かったなぁ……」

「羽瑠、イルカ好きなんだな」

「うんっ! 大好き!結星くんは何が1番好き?」

「俺は……、サメかな」

「あっ、男の子っぽい!」

前のデートの時は、私が一方的に話すことが多かったけど、今回のデートはちゃんと……、1つ1つ大切に会話してくれてる気がしていた。

なんか……幸せだな。

***

水族館を出たのは18時過ぎのことで。

寮に向かい、並んで夜道を歩く。

この数ヶ月本当に色々なことがあった。

季節の移ろいに目を傾ける時間も余裕もないまま、いつの間か冬を迎えていた。

凍てつくような風から守るようにして繋がれた右手は結星くんの温もりに包まれていて。そこにギュッ、と力を込めながら結星くんを見上げた。

「ねぇ……結星くん…」

「ん?」

‪”‬今ある幸せ‪”‬が当たり前じゃないんだ、って知ったのは、最近のこと。

結星くんがこうして私の隣に居て。

たわいない話をして。
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