世界で1番泣き虫なキミを愛し続けると誓う
もちろん医者には、その手術で完全に完治するかは分からない、と説明を受けたし、たとえ手術で全て腫瘍を取り除けても転移の可能性もあると聞いていた。

そんなありとあらゆる可能性は、今も尚こびり付くように俺の頭に残っていた。

見出した希望なんて簡単に消し去りそうな懸念点なんて、山ほどあったけど‪”‬大丈夫。きっと大丈夫だ‪”‬と必死に自分に言い聞かせていた。

この時の俺は、まだどこか実感が湧いていなかったのかもしれない。

***

「もしもし、羽瑠か?」

手術を明日に控えたその日。

病室入ろうとした俺の耳に彼女と電話しているであろう声が聞こえてきた。

ついドアに伸ばしかけた手を止めて、こっそり盗み聞きしてしまった。

「俺? 元気だよ。めっちゃ元気。今日も部活の応援頼まれちゃってさー、はは…」

その言葉が耳に届いた時。

あぁ…、結星は彼女に病気のことを話していないんだ、と知った。

***

「なんか……頭切るとかよくよく考えたら怖いな」

「なんだよ? ビビってんのか? 寝て起きたら全部終わってる」

入院中。
俺の前ではずっと笑顔で振舞っていた結星だったけど、さすがに手術当日のこの日はちょっと不安げだった。

俺も完全に平気だった、って訳じゃない。

でも結星を励ましたくていつも通りを装った。

「なぁ、その腫瘍? 治ったらさ、どっか遊び行こうぜ」

「お前が誘ってくるとか珍し」

「うっ、うっせぇよ…」

「成瀬結星さん、そろそろお時間です」

「じゃあ行くとこ考えといて?」

「あぁ」
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