世界で1番泣き虫なキミを愛し続けると誓う
それからストレッチャーで手術室に運ばれていく結星を見送りながら祈るように

「頑張れ……」

と呟いた。

手術時間は4時間程度だと聞いていた。

しかし実際は4時間も経たないうちに医者が手術室前で待機していた俺の元にやって来た。

「どうしたんですか」

まさかなんかあったんじゃ……。

そんな嫌な予感に囚われながら、尋ねる。

すると医者は

「落ち着いて聞いて下さい」

と深刻そうに告げた。

「腫瘍の進行が想像以上に早く​────…」

難しい説明は……

「このまま手術を続行すれば、大出血する可能性が​────…」

よく頭に入ってこなかったが、



‪”‬ 手 術 は 中 止 で す‪ ”‬



という言葉だけは、くっきりと刻み込まれるように聞こえた。

「は…? じゃあ結星はどうなるんだよ!?」

俺の怒鳴り声が無機質な廊下に淡々と。虚しく。どこまでもこだましていた。

***

「手術……成功したのか?」

それから麻酔が切れて、目が覚めた結星に、俺はなんて声を掛けてやればいいか分からなかった。

「……」

悔しくて。悔しくて。

喉に何か大きなものがつっかえているみたいで。

結局何も言ってやれなくて。

「………っ、…」

ただ黙って、結星の手を握って、押し殺しきれなかった涙を零した。

そんな俺の姿に、結星は察したんだろう。
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