世界で1番泣き虫なキミを愛し続けると誓う
‪”‬紅嵐‪”‬という、もう私にとっては恐怖でしかない名前にビクッ、と肩が跳ねるけど、当の本人の姿は見当たらなくて少しホッとする。

「そっ、そっか…」

「よいしょっと」

木から私がいるベランダにひょいっ、と軽やかに飛び乗った海月くん。

そしてなんの躊躇いもなく私に近づいて…

ーーギュ……

暖かい温もりが走る。

私が今さっき結星くんにそうして欲しい、と願ったように。優しく。包み込むように。

​───────…抱きしめられていた。

え……っ

海外では男女のハグは挨拶の意味合いもあるし、よくあること。日常茶飯事だったりする。

……ちなみに、あれ? ここって海外だっけ?

あまりにナチュラルに抱きしめられたので動揺してしまう。

やめて!と突き離すことも出来たけど、でも今はそんな気力なんかなくて。

抗うことなく、ただ抱きしめられていた。

「どうして泣いてたの?」

ゆっくりと、身を離され、私の前に膝まづいた海月くん。

眉を下げて悲しそうな顔で首を傾げ、子犬のような上目遣いで私を見つめている。

「……ううん、泣いてないよ。ちょっと目にゴミが入っちゃってただけなの」

口からポロリ、と出たのは精一杯の強がり。

自分を取り繕うことで必死だった。

結星くんに冷められたかもしれない。
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