君が居場所をくれたから
学園の王子様

1番が1番いい

俺はいつから一番に固執するようになったのかと考える。

弟が生まれた時から?
中学一年生の時に勉強で一番を取れた時から?
何となくで始めたサッカーでMVPを取れた時から?

いくつかきっかけと思うものを思い浮かべてみるがいまいちピンと来ない。

いやまず俺は一番に固執しているのか。固執しなければいけなかったのではないか。

弟が生まれた時、母は俺に「これから、あなたはこの子の手本になるのよ」と言われた。

初めて勉強で一番を取れた時、父と母に見せた。褒めてくれると思った。いや、実際褒めてはくれたのだが、父と母は「じゃあ次も一番だね」と言った。

サッカーでMVPをとった時、弟が「一番のお兄ちゃん好き」と言った。その弟の姿を見て父と母は喜んだ。顧問も逸材が入ってきてくれたと喜んでいた。

家族や教師達からは期待の眼差し。同級生や友達からは憧れの眼差し。そして皆口々に「期待してる」「頑張れ」と言った。

小学生までは俺は割と低身長だった。中学にあがり成長期に入ると身長がぐんと伸びた、あっという間に高身長の仲間入りをした。

顔は整っている方だと思う、自惚れているのではない。父と母が俺の目からしても美形と分かるほどだったから。成長期で身長が伸びたのも相まって俺はモテだした。

中学一年生の夏、小学生の時好きだった女の子に告白された。
天にも昇る気持ちとはこのことかと思うほど嬉しかった。
付き合ってから程なくして彼女に「俺のどこが好きなの」と聞いた。彼女は「身長が高くて勉強も出来てスポーツ万能なところ!」と答えた。

中学二年生になった頃、みんな学校に慣れてきて少し気が緩む学年。俺も少し気が緩んだ。勉強を少し手を抜いた、そしたら一番を逃してしまった。

結果、父と母は「次は一番」と言った。弟には怒られた、「一番じゃないお兄ちゃんは嫌い」と言われた。彼女は「勉強ができない蓮くん好きじゃない」と言われた。

そこで改めて思い知った。一番ではない俺は価値がないのだと、今考えればそんなことないと思うが当時俺は14歳、それに価値がないと思わせるきっかけがもう一つあった。

中学二年生の夏休み。俺は家族で父方の実家へ帰省した。
アニメに出てくるようなバカでかい和風の御屋敷。
お爺様は大手企業の会長、ゆくゆくは俺の父に跡を継がせ、そして次に俺、と考えているらしい。

実家について早々、俺はお爺様に呼び出された。
お爺様の自室へ行くと俺は跡継ぎとしての自覚が足りていないと怒られた。

お爺様は夏休みの期間中、俺をこっちに住まわすと言った。
お爺様に逆らえない父と母は弟だけを連れて家へと帰っていった。

お爺様はとても厳しかった。夏休みの宿題で分からないところがある、とお爺様に聞くと「自分で答えを探しなさい、答えを見つけるまで飯は食べさせん。」と言った。

お爺様は口癖のように俺に言った。

「お前は他の奴らより優れているのだ。生まれから他の奴らとは違うんだ。常に他の奴らより上の存在であること、そして自分が選ぶ立場でいろ。選ばれる立場であるお前は存在価値がない。」

「はい。お爺様。」としか言えなかった。まだ自分で稼ぐ能力もないどうあがいても親のスネをかじって生きていくしかない俺にとって、お爺様の言葉は真理だと思った。

夏休みが終わり学校へ戻ると彼女には彼氏がいた。どうやら振られたらしい。新しい彼氏は俺が一番を逃した時に一番だったやつだった。
好きで付き合ったはずなのになぜか悲しくなかった。

それから俺はお爺様のいう高貴な存在というのを心がけた。常に自分が選ぶ側、周りと一線をひいた。
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