君が居場所をくれたから
そんな生活を続けて俺は高校生になった。高校一年生のの春、演劇部の新入生歓迎公演を見に行った。
題名は忘れたが確か、落ちこぼれの主人公がいろいろな人に出会って芯の強さを学んでいく。的な内容だった。

その演技中の中で一際目立つ奴がいた。俺は主人公より主人公してるとその時思った。それは周りの奴らも同じなようで、みんなあいつの演技に惹かれていった。

公演が終わったあと、皆口を揃えて「あの役者は誰なのか」と言った。

”あの役者”と次に出会ったのは部活ミーティングの時。
俺は副部長として、あいつは部長の代理として来ていた。

腰辺りまであるホワイトシルバーの髪に琥珀色の瞳。

会話という会話はしていない。
空いている日、比較的暇な日を教えただけ。
名前も知らない。だが、また話したいと思った。


その話すチャンスは思ったより早く来た。

俺はサッカー部の練習が終わった後も自主練をしていた。
他の奴らが俺に追いつけないようにするため。
俺が選ぶ立場でいられるために。

「あ、」

やばいと瞬間的に思ったが遅かった。
ボールを蹴ろうとしたがボールと足との距離が想像より近かった。
足がボールの上に乗ってしまい滑って派手に転んでしまった。

その時に足首をひねってしまったのか、すごく痛む。
やめてくれ、1週間後には高校に入って初めての試合なんだ。
両親と弟、そしてお爺様が俺の初試合を見に来る。

自主練を切り上げて、寮に戻ってシップでも貼っておこう。
転がったボールを拾い上げ、片足を引きずりながら部室へと戻った。

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