君が居場所をくれたから
ボールを元の位置に戻し、戸締りをして鍵を返しに職員室へ向かう途中、ふと体育館横にあるプレハブ小屋を見た。

演劇部の部活だ。
まだ明かりが付いている。

ここの学園は演劇部が有名だ。
校門前に”演劇部全国優勝おめでとう”という垂れ幕がかかっている。

そのため、他の部活より優遇されている。
まだ、あの部室にあの新人役者がいるのだろうか。

そんな馬鹿げた想像をしながら職員室へと向かった。

職員室は本館の二階にある。
つまり、階段を上らないといけないということだ。
エレベーターはあるが、18時には止まってしまう。
時刻は今、18時30分。

階段を上るしかない。
「はあ」とため息を一つこぼしながら、一段目に足をかけた。

2階へ上るのにこんなにも息が上がるとは思わなかった。
足を引きずりながら階段を上がるので必然的に怪我をしていない方に体重がかかってしまう。
体力はある方だし、トレーニングもしている。なのに、

「もう少し、体力をつけよう」そう心に誓った。

数メートル歩けば職員室、一歩踏み出した瞬間。

「いっ…」

足に激痛が走った。
その場に座り込んで、靴下を脱いだ。
足首は異常に腫れていた。

折れているのではないか。

そんな最悪な事態が頭に浮かぶ。
困る、いや、困るどころじゃない。

いや、落ち着け。いくら思考を巡らせても状況が変わるわけじゃない。
とりあえず痛みが引くのを待った。
< 4 / 6 >

この作品をシェア

pagetop