のーどくたーのーらいふ[短編]
なんで大嫌いな病院に来ちゃったんだろう














あのまま家にいればバレなかったのにな














この期に及んで














まだそんなことを考えてる自分がいる














京は絶対に気づいてしまうのに














もう体力の限界で通り道だというのに














ヘナヘナと座り込んでしまって














私の存在に誰も気づかないでなんて思って














胸も息も心も苦しくて














気持ち悪いし頭ガンガンするし














そんな状況を作り出してしまった自分に














嫌気が差して涙が溢れてきた














「グス」














幸いお昼時だったから人はいなくて














その光景に安堵した














「っっ、」














胸の痛みが増してきてる気がする














どうしてなの














そう思いながら胸を強く抑える














誰か助けて、誰か














そう心の中で叫んでいた時














蓮「おい、大丈夫か?」














その強く優しい声にまた涙が溢れた














「せんせ、」














なんとか言葉を発する














蓮「お嬢か、」














「せんせ、お願い。京には連絡しないで」














先生の腕を力が入らない手で掴んで














はぁはぁと息を切らしながら














今、1番伝えたい言葉を紡ぐ














蓮「分かった、とりあえず移動するぞ」














何かを察してくれたのか














凛の気持ちに答えてくれる先生














蓮「しっかり摑まってろ」














そう言って、お姫様抱っこをしてくれる














少し移動すると部屋に入ったのか














凛をベッドの上に降ろして














病室らしき部屋の扉をガラガラと閉める














「ここどこ?」














蓮「救急科の病室だ」














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