蓮の花咲き誇る池に落ちた蜻蛉玉
人でにぎわう商業の町を軽い足取りで歩いていく一人の少女。
ひときわ目立つのは着物か、容姿のせいなのか、合い知れず。
「お、今日もおつかいかい?えらいねぇ」
「もう!門真のおじさん!私、もう子供じゃなくなるのよ!」
一人の男が少女に話しかけ、立ち止まり相手をすると、周りの様子を窺っていた人たちも少女を囲むように話しかけた。
「美鈴様、今日は良い実がなったんです!よかったら、食べていってくださいな」
「美鈴様、この間おばぁを見てくれたんだってぇ?助かったよ!お礼にお茶飲んでいきな!」
餌を与えられた家畜のように、少女に群がる町民。
「おい!やめねぇか!お前ら、美鈴様が困ってんだろ!」
「いいの!おじさん!みんなとお話できてうれしいわ」
数人、数十人と、どんどん人の輪が大きくなっていく。
「美鈴様!今日の魚は将軍様に気に入っていただけたんですよ!」
「あら、そうなの!捌き方を身に着けれてよかった」
「美鈴様!うちの子に寺に行くように言ってくださったみたいで!」
「あの子に行く意思があったから、、って、皆落ち着いて!」
次々に「美鈴様」、「美鈴様」、と名前を何度も呼ばれて、いつの間にか少女は身動きができなくなっていた。
押し寄せてくる人波に、のまれそうになっていたとき、後ろから引っ張られる感覚があった。
「お前たち!この方を誰だと思っている!」
少女を庇うように背中に隠し、荒い声で言った男性。
「…虎吉」
「散れ、お前たち!さもなくば、、番につきだすぞ」
その言葉に肩をびくつかせながら、急ぎ足で去っていく町民。
「おめぇも、かわんねぇな」
「…いくら、四条家に昔仕えていようと、このようなことがあっては困りますよ」
「虎吉!何を言ってるの!」
「美鈴様、そもそも、町民たちにつけあがらせることはいってはいけないと、あれほど言ったではないですか」
「ただの町の人ではないわ!四条家の町の人よ!雑に扱っていいような人達ではないわ!」
「はぁ、美鈴様は世の中が見えていないのです。…さぁ、早く戻りましょう。当主様と奥様がお待ちです。」
「私のことは、ほっておいて!これ、早急にって言われてたから届けておいてね」
少女は、男