すみっこ屋敷の魔法使い
すみっこ屋敷から外に出て、モアは気付く。すみっこ屋敷の外に出たのは初めてだと。
この屋敷があるのは、エディの屋敷がある街とは異なる街のすみっこ。つまるところ、モアが初めて訪れる街だ。
屋敷の外に出ると、ざあっと草原が波を打つ。そよそよと優しい風が吹いて、鳥の鳴く声が聞こえてきた。
「……!」
「モア、何しているの? 行こ!」
「は、はい……」
手を引っ張られて、モアは歩き出す。
こんなに、肺いっぱいに息を吸ったのはいつぶりだろう。日の光をさんさんと浴びたのはいつぶりだろう。
空を見上げると、ほんのり、光がにじんだ。