すみっこ屋敷の魔法使い
 連れられた先の部屋には、どろどろとした悪魔がいた。

 エディ――モアの主の男。

 エディは、モアを部屋の中心まで連れて行く。そして、天井からぶら下がる拘束具をモアに取り付けた。腕を上げて、手錠でつるす。モアは周囲を這いずり回る液体のような悪魔を見て、身体をがくがくと震わせる。


「さあ、モア。今日もがんばって」

「……はい、エディ様」


 はい、とは言ったけれど。

 本当はイヤ。

 イヤだけど、我慢しなければいけない。

 エディが部屋から出て行くと、アクマがずるずるとモアの身体に這い登ってきた。ゾワゾワ、と身体中が粟立つ。

 悪魔にはタコのようにたくさんの吸盤がついていて、それでいて液体のようで身体は形が定まらなくて。モアの足に、膝に……ずるずると登ってきては、吸盤できゅうきゅうと吸い付いてくる。


「くっ……ぅ、……」


 気持ちが悪い。

 バケモノが身体の上を這いずり回る。どろどろの粘液が身体に絡みついて、吐き気がこみ上げてくる。


「あ、あ、あ、」


 いや。

 頭がぼんやりしてくる。

 毎日、毎日、身体を辱められて、もう、身体は壊れてしまっている。

 気持ち悪い、気持ち悪い……!



「ああ、あ、ああ、あ、あっ」


 ぐちゅ、ぐちゅ。

 
「やめて、やめて……」


 虚しくなりながら、モアは言い続けた。

 ぽろぽろと涙を流しながら。
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