すみっこ屋敷の魔法使い
 窓の外を見つめる。

 今日は晴れ。外の天気なんて関係ないけれど。

 モアはベッドの上で、ぼんやりと天井を見つめた。隣にはエディが眠っている。モアは、エディが起きるまでベッドから出てはいけないことになっている。何をするにも、エディの言うとおりにしなければいけない。

「うーん、」と声をあげて、エディが目を覚ました。モアはちらりとエディの顔を窺い見た。エディは髪をがしがしとかきながら身体を起こして、じろりとモアを見下ろす。


「やあ、おはよう。モア。いい天気だね」

「……はい。エディ様」


 エディの横顔は、彫刻のように整っていた。

 エディが恐ろしい魔術を使おうとしているということは、この屋敷にいる者以外知らない。エディの魔術は門外不出。だから、外で生きる人たちは、エディのことを「麗しい伯爵様」と称えている。若く、才能にあふれた男だと、そう思われているらしい。

 けれど、モアにとって彼は恐ろしくてたまらない。彼が何を考えているのかわからない。

 今日も――彼に、辱められるのだろう。そう思うと、昏い影が心にさす。
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