シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
~AKITO side ⑦~
その日、飲み会メンバーはさっさと仕事を切り上げていき、明人は定時を過ぎた頃に会議室からオフィスへ戻ったところで浅井と鉢合わせた。
浅井はすでに帰り支度をしており、満面の笑みで明人に声をかけた。
「お疲れさまです、穂高さん。一緒に行きます? 俺待ってましょうか?」
「いや。用事があるからいい」
「そっすか。じゃあ俺、先に行っときますね」
浅井が帰ったあと明人はデスクで書類を片付け始めた。特に急ぎで片付ける仕事があるわけではなく、ただある人物と会うことになっていた。
スマホにメッセージの通知があると、彼はすぐに席を立った。
向かった場所は人がまばらにいるカフェスペースだ。そこの窓際のスツールに芦田利香が座っていた。彼女は明人に気づくと満面の笑みで手を振った。
「お疲れ、明人」
明人は利香の声をスルーして、真顔のままハンカチを取り出すと彼女に突きつけて言った。
「妻に近づくな」