シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~

8、もっと好きになった日

 優菜と一緒に訪れた居酒屋は明人さんと初めて会った店だ。
 それまでは会社と家を往復するだけの平坦な人生だったのが彼と出会って劇的に変わった。
 だけど私は彼のことをいまだによく知らない。
 今までどんなふうに生きてきたのか、誰と関わってきたのか。

「考えてみたらすごーく腹が立ってきた」

 私たちはカウンター席に並んで座り、私はビール2杯のあと焼酎を飲んでいて、程よく酔っていた。

「波留、ちょっとペース早いよ」
「飲まなきゃやってられないよ」
「めずらし。波留が怒ってる」
「あの人、私の知らない明人さんのこと自慢げに話したあと、夫婦なんだからそれくらい知ってて当然でしょみたいに言ったんだよ。なんであなたにそんなこと言われなきゃいけないんですか!」

 私は勢い余って箸で唐揚げを刺した。そして刺したままそれを口に頬張った。唐揚げは少し冷めてるけどカリッとして美味しい。

「だいたい浅井さんもね、わざわざ私が不安になること言わなくてもいいでしょ。そりゃ会社の明人さんのこと知りたい気持ちはあるけど、私から教えてほしいって言ってないよ? 浅井さんが勝手にしゃべったんだから」

 私は唐揚げを食べたあと焼酎をぐいっと飲んだ。

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