シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
 甘えるような声で、背後から私にぴったりくっついて、私の耳もとでそんなことを言う。
 猛烈に恥ずかしくなってきて耳が熱くなった。

「あ、明人さんて、甘えん坊さんですよね」
「そうだよ。だから食べさせてよ。妻に食べさせてもらいたい」

 明人さんは社内ではどんな姿なんだろう。
 絶対こんな姿は見せないよね。
 ていうか、こんな姿を見たらみんな卒倒するだろうなあ。

 これも妻の特権だと思うと無性に嬉しい。

「はい。じゃあ、あーん」
 
 私がマスカットを彼の口に運ぶと、彼は私の指ごと口に含んだ。
 とっさに離れようとしたら、なぜかその手を掴まれて、彼は私の指を舐めた。

「ちょ、ちょっと明人さ……」
「美味い。もっとほしい」
「じゃあ、もう一個……」
「違う。君が食べたい」
「ええっ!?」

 うはあっ……!

 彼は私の腕をぐいっと引いて素早く腰に手を回すと、そのまま私に口づけた。
 突然のキスは最初にマスカットの味がして、そのあとはもっと甘くてとろけて、幸せな味がいつまでも続いた。
 そして、私たちはマスカットを食べる余裕がなくなってしまった。

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