シェフな夫のおうちごはん～最強スパダリ旦那さまに捕まりました～

「で、何があったの？　穂高さんと喧嘩したわけじゃないのにそんな落ち込むなんて」

　私は勇気を出して訊ねてみることにした。

「浅井さん、教えてください」
「え？　何を……」
「芦田さんは明人さんに好意を持っているんじゃなくて、明人さんの元カノさんではないですか？」
「えっ！」

　浅井さんの驚いた表情と、わずかに目を泳がせた瞬間に、私は確信してしまった。

「どうかな……」
「秘書課の人たちも知っていたんです。浅井さんが知らないわけないですよね？」
「えっ！！」
「大丈夫です。受けとめます。もやもやするの嫌だから」

　すると浅井さんは少し沈黙したあと小さく頷いた。

「うん、そうだよ」

　浅井さんは困惑の表情で苦笑する。
　だけど、これですべてがつながったのだ。ずっと引っかかっていたことがすっきりした。代わりに少し、悲しい気もしたけれど。

「これですべて納得できました。接点のない芦田さんと偶然にしてはばったり会うことが多くて、おかしいなって思っていたんです」
「え？　芦田さんと会ったの？」
「はい。彼女はわざと私と会って私に明人さんの自慢をして、私を下げたかったんです。きっと」
「そんなひどいこと言われたの？」
「ちょっと、傷つきました」

　浅井さんは額に手をついて大きなため息をついた。