シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
~AKITO side ⑧~
穏やかで幸せな日々が続くように見えたが、生活していく上で不変などというものはない。
やがて明人は仕事が忙しくなり、帰宅が深夜になることが多くなった。
急な出張もあり、平日は波留とすれ違いになって会話が激減していった。
それでもメッセージのやり取りなどでコミュニケーションは取っていたつもりだった。
明人は少々イラついていた。
理由は波留ではなく、仕事の上でのことだった。
業務上忙しいことに何の不満もないが、彼女が関わってくる件ではどうしても感情の起伏が激しくなり、それを制御するのに必死だった。
そして、ある夜、事件は起こった。
その日は朝早くから浅井と遠方に出張だった。
仕事を終えたあとは取引先のメンバーとの飲み会があり、そこには当たり前のように利香がいた。
彼女は非常に酒飲みであり、悪酔いしやすいということを明人はよく知っていた。
巻き込まれるのは嫌なので、明人は早々に帰りたかったのだが、浅井に泣きつかれてしまった。
「穂高さんがいないと誰が彼女を止めるんですか?」
知るか、と言いたいところだったが、彼女は仮にも重要な取引先のリーダーであるから、こちらの責任者としても無下に扱うわけにはいかず、最後まで飲みに付き合った。
しかし、それが少々ややこしいことになってしまったのだった。