シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
「浅井、俺は2次会にまで付き合うとは言っていない」

 明人はカウンターテーブルの前でウーロン茶を飲みながら淡々と言った。
 そのとなりで浅井が明人の腕を掴んで泣きつくようにすがった。

「だってだってさーほら。この人の暴走に俺ひとりで対処できるわけないでしょー。わかるでしょー」

 そして浅井のとなりには酔った利香がテキーラのカクテルを注文しているのだ。

()めろ」と明人が促すと、浅井は「無理っす」と言って自分はコーラを飲んだ。

「で、どこまで話したっけ?」
 と利香が訊ねると浅井が答える。

「ああ、銀座で食事をしたあと六本木にあるホテルに宿泊するつもりだったのに直前になっていきなり仕事が入ったと言われてキャンセルされた男の話ですね?」
「よく覚えてるわね」

 利香が浅井を睨むように横目で見る。

「しかもクリスマスでしょー。それ、絶対仕事じゃないっすよ?」
「わかってるわよ! なんか腹立つわ」
「じゃあ話さなきゃいいのに」

 浅井が利香の話し相手をしているあいだ、明人は頻繁に時計を確認していた。
 今夜は遅くなると伝えているから波留は先に寝ているだろうとは思うが、どうにも落ち着かなかった。

< 140 / 178 >

この作品をシェア

pagetop