シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
 利香は目を見開いて明人に近づき、彼の腕を掴んで顔を上げた。

「どうして? あなたともう一度やり直すために帰ってきたのに、なぜ結婚してるの?」

 明人はさすがに困惑し、利香の肩を押して離れようとする。

「君とはきちんと別れた。話し合いの席でいきなり怒って連絡を無視したのはそっちだ。別れようと言ったのもそっちだ。今さらそんなことを言われても困る。はっきり言って、君に情など一切ない」

 強い口調でそう言われて、利香は信じられないという顔で明人を見つめ、唇を噛んだ。
 そして、彼女は訴えるように声を上げる。

「あんなの本気にするの? 私はあなたにもっと想われたかったのよ。追いかけてほしかったの! それくらい察してよ!」

 明人は利香の腕を振りほどいて距離をとる。
 そして彼女を睨むように見据えた。

「今後のために忠告してあげるよ。冗談でも別れようなどと言わないほうがいい。俺のように駆け引きをする女が大嫌いな奴には特にね」

 後半はさらに強い口調で言った。
 利香は驚いた顔で口を開けたまま明人を見る。

「わ、たし……嫌われていたの?」

 明人は遠慮もなく堂々と答える。

「ああ、嫌いだね」

 利香は言葉を失って、目を泳がせながら頭をくしゃっと掻いた。

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