シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
 その夜、何もなかったように帰宅したつもりだった。
 波留の顔を見ると安心感と、妙な罪悪感が彼の胸中に渦巻いていた。
 あれだけはっきり言ってやったのだから、利香はもう波留に近づくことはないだろう。そう願いたい。

 今日はあまりにも疲れてしまい、先に寝てしまった。
 波留がどんな気持ちでいるのか、このときの彼には察することができなかった。

 そして後日。
 帰宅した彼に待ち受けていたのは、神妙な面持ちをした波留の姿だった。

「明人さん、話し合いたいことがあります」

 いつものふんわりした笑顔の波留ではなく、まるで戦いを挑んでくるような彼女の姿に明人はたじろいだ。

「何か、あった?」
「はい、ありました。実は私、芦田さんという人から嫌がらせを受けていました。彼女は明人さんの元カノさんですよね?」

 明人は言葉に詰まり、眉をひそめた。
 
「とりあえず、ごはん食べましょう。もうできています」

 波留に促されてリビングへ入ると、ダイニングテーブルの上にはカツ丼が用意されていた。
 今夜はみっちり取り調べを受けるだろうことを明人は覚悟した。

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