シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~

12、切ないごはんの思い

「明人さん、お風呂空きましたよー」

 ある夜、お風呂上がりにリビングに行くと明人さんの姿が見えなかった。キッチンにもいないし、トイレにもいないし、寝室にもいない。
 どこに行ったんだろうと思って探していたら明人さんが書斎にしている部屋のほうから声が聞こえてきた。
 どうやら誰かと電話をしているようだ。邪魔しちゃ悪いと思ってこっそり離れることにした。そのとき、彼の口から衝撃的な言葉が飛び出した。

「ああ、そうか。彼女の命日だったな」

 彼女の命日!?

 どきりとして足が止まってしまった。
 盗み聞きなんてしちゃいけないと思ったけど、気になってそのまま耳をすませていた。

「いいよ。俺はひとりで行く。いろいろ報告したいこともあるしね」

 彼女の命日に報告したいこと……。

 ドキドキして私は硬直したまま動けなかった。そうしたら、電話を終えた明人さんが部屋から出てきて私を見ると驚いて目を丸くした。

「波留、どうしたんだ。そんなところに突っ立って」
「えっと……ごめんなさい。聞くつもりはなかったんですが」
「ああ。義母(かあ)さんと電話していたんだ」
「お、かあさん……?」

 明人さん、昔の彼女さんと家族ぐるみでお付き合いしていたんですか?

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