シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
「あの、彼女の命日って……」

 私は気になり過ぎてつい訊いてしまった。そうしたら彼はすんなり答えてくれた。

「ああ。俺の料理の師匠。去年は墓参りしていないから今年は行きたいと思ってる」
「そ、そうなんですか」

 そっか。私ったら早とちりしちゃった。

「料理上手な明人さんの先生だったらきっと料理の腕がすごい人なんでしょうね」
「ああ、そうだね。特別な人だったよ」

 特別な人!?

「まだ若いのに残念だった」

 明人さんがその師匠の話をするときの表情がとても切なそうで、きっとすっごく好きだったんだなって思った。

 やだ、私ったら、亡くなった人に対して嫉妬してる。
 でも、明人さんがこれほど信頼して優しい顔をして話す人だから魅力的で素晴らしい人だったに違いない。

「お墓参りに行くんですか?」
「そうしたいね。波留のことも紹介したいし」
「じゃあ、私も一緒に行っていいんですね」
「一緒に来てくれると嬉しいね」

 明人さんの師匠さんのお墓参り。
 なんだか少し複雑な気持ちだった。

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