シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
 明人が対面した祖母は驚くほど白くて美しい顔をしていた。
 こんなに綺麗な人だったかな、と彼は不思議に思った。

 葬儀は粛々と執り行われ、彼は涙を流すこともなく、その過程にただ流されるように体を動かした。
 義母の涼子があまりにも泣きすぎるので、明人はその背中をさすってあげた。
 大勢の人たちが涙を流す中、彼は祖母の眠る棺に向かって真顔でぼそりと呟いた。

「もっと美味いもん、食わせてくれるって言ったじゃん」

 その言葉に対し、祖母からの皮肉めいた答えは、永遠になかった。


 朝の海はやけに穏やかで静かだった。
 人の気配はなく、ただ真っ青な空と海があり、船が出ていく音と肌に当たる風がいつもより感覚をより強く刺激した。

 かすかな記憶の中で、包丁の音がトントントンと彼の頭の中で響いた。
 それほど親しくなかったのに、この例えようのない喪失感は何なのか、彼には理解できなかった。

「血もつながっていない他人なのに」

 そんなことを呟くと、遠い記憶の中から祖母の怒声が聞こえてきた。

『ぐちぐちうるさいねえ。お前はあたしの家族なんだよ!』

 明人はまっすぐに海を見つめたまま、静かに涙を流した。

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