シェフな夫のおうちごはん～最強スパダリ旦那さまに捕まりました～
　電話の相手は１年前に別れたばかりの芦田(あしだ)利香(りか)だ。

　彼女は会社にとって重要な取引先の相手であり、容姿端麗で聡明、プライドも高い。
　特に明人の好みではなかったが、会社のプロジェクトをともに成功させたことがきっかけで付き合うことになった。

　それが３年前のことだ。

　２年ほど付き合ってみたがあまりにも価値観が合わないので彼女の海外転勤と同時に別れた。
　はずだった。
　それなのに、帰国してから何度も連絡をしてくるのだ。

　新しい恋人がいると嘘でもつこうかと思っていたときに、波留と出会った。
　波留はあまりに自分の性癖ドストライクだったので、これは天から与えられたチャンスだと思った。

　利香には絶対に邪魔されたくない。
　釘を刺しておくべきかなと思い、この日彼は電話に応答した。

「はい」
　と愛想のない声で電話に出ると、相手は明るく返してきた。

『久しぶりね、明人。ちっとも電話に出てくれないんだから。メッセージも無視してるでしょ？』
「ええ、まあ。未練のない女と話すことなどないので」

　かなり冷たい口調で伝えたつもりだ。
　しかし利香は動じない。

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