シェフな夫のおうちごはん～最強スパダリ旦那さまに捕まりました～

　どうしよう。でも、いつかはするんだから、別にいいよね？

「お、お願いします」

　おずおずと申し出ると、彼は私の顎を掴んでぐいっと自分へ向けた。
　その瞬間、彼とばっちり目が合ってしまった。
　明人さんはいつもの穏やかな表情ではなくて、わりと真剣な目をしていた。
　まるでその目に射抜かれてしまいそうになるくらい、私の胸の鼓動が高く鳴った。

　明人さんが顔を近づけてきて、ふわっと柑橘系の大人の香水の匂いがして、同時にその唇が触れた。

　すごい。キスってこんな感触なんだ。
　２４歳にして初めて男の人とキスをした。
　優しくて温かくて、ドキドキする。

　こんな素敵なことを今まで私は知らなかったなんて。

「こんな感じで挙式当日はすると思うよ」
「ありがとうございます」

　お互いの顔が離れたら、ものすごく恥ずかしくなって私は彼の顔がまともに見られなくなった。
　ファーストキスの感触はさわやかで優しいものだった。


※明人の心情（こんなものキスのうちには入らないんだが、これ以上やるとさすがにまずい。俺が）