シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
「大丈夫?」

 感動で涙と鼻水を垂れ流す私に、明人さんがテッシュの箱を差し出した。
 私はテッシュを取って鼻をかみながら彼に訴えた。

「こんな泣ける話をオススメするなんて穂高さんはずるいですよ」

 明人さんはふっと笑っていきなり私をぐいっと抱き寄せた。

「こんなに泣くと思わなかったから。君は純粋なんだな」
「穂高さんは泣けなかったですか?」
「え? いや、まあフツーに感動したよ」
「そうですか」

 男の人は感動して泣くことってあんまりないのかな?

「それより、君はいつまで俺を名字で呼ぶの?」
「え?」
「名前で呼んでくれると嬉しいんだけど」
「あ……」

 そうだよね。いつまでも穂高さんじゃおかしいよね。
 夫婦なんだし。

 ちょっと恥ずかしいけど、勇気を出して呼んでみる。

「明人、さん……」

 すると彼はにこにこ笑って私の髪をくしゃくしゃと撫でた。

「可愛いな」
「え……」
「俺も波留って呼んでいい?」
「はい、もちろん」

 すると明人さんは私をまっすぐ見つめて真剣な表情で言った。

「波留」

 どきりとして胸がぎゅっとなった。
 名前呼び効果ってすごい。
 映画の内容も吹っ飛ぶくらい、ドキドキしてきた。


※明人の心情(いける……!)
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