シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
~AKITO side ④~
目が覚めたらキッチンでガサガサ音がしていた。
カーテンの隙間から明かりが見える。
壁時計は8時を過ぎたところだ。
(朝……?)
体を起こしてキッチンへ目を向けると、ちょうど波留が冷蔵庫から卵を取り出してこちらを振り返ったところだった。
(まじか。なんで寝てんだよ、俺)
こちらに気づいた波留が困惑の表情で声をかけてきた。
「あ、ごめんなさい。うるさくしちゃいましたか?」
「あー……いや、大丈夫」
くしゃっと髪をかきながら、ぼんやりした思考をどうにか整理する。
そうだ。映画を見ながら寝てしまったのだ。
「君はずっと起きていたの?」
「いいえ、さっき起きたんです。昨日は明人さんに朝食を作ってもらったので、今日は私が」
波留は耐熱ガラスのボウルとステンレス製の泡立て器を手にして言った。
「……何を作るの?」
「パンケーキを作ろうかなって」
「ふうん」
明人はキッチンに移動して、波留が用意した器具と材料を見ると言った。
「店より美味いやつ、作る?」
「え? そんなことできるんですか?」
「一緒にやろうか」
「はい!」
波留はわくわくした顔で提案に乗った。
(ああ、この子のこういうノリのいいところが本当に好きだな)