シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
 まさに完璧だった。夕方までは。
 ふたりは洗濯をして簡単な家事を済ませたあと、買い物に出かけた足で外食して帰宅した。

 今夜はどうしても決行したかった明人は先に風呂に入り、波留が風呂から出てくるのを待った。

「今日はちょっと疲れましたね」

 波留はそう言いながら大きなあくびをした。
 それを見た明人は内心焦る。

「昨日は夜更かししたから今夜は早めに寝よう」

 そう言って波留を寝室へ促す。
 まだ21時前だが、とりあえずベッドに連れ込めばもうこっちのものだ。

 ふたりでベッドに入り、布団をかぶる。
 波留はすぐに目を閉じて深い呼吸をし始めた。

(ちょっと待て! 秒で寝るのかよ!)

「波留」
「えっ……?」

 波留はうっすら目を開けて明人に目線をやった。

「明人さんも疲れたでしょ? ゆっくり寝て……」
「だめ」

 明人はもう我慢できなかった。
 ぐいっと波留を抱き寄せて、額にキスをする。

「明人さん……?」
「今夜は寝かさない」

 自分でこのセリフを言うことになるとは思わなかった。
 しかし、これは別に甘い言葉でも何でもない。
 とにかく、本当に寝かせてたまるものかという執念から出た言葉だ。

(がんばれ、俺!!!)

< 46 / 178 >

この作品をシェア

pagetop