シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
「や、やだ……痛く、しないで……」

 ものすごく怖くなって懇願したら、彼は驚いた顔で固まった。
 彼は私に覆いかぶさった状態で、私の腕を掴んでいる。
 そのまましばらく静止状態だったので、不思議に思って声をかけた。

「明人さん?」
「君は……」
「え?」

 彼は目に見えてわかるほど赤面し、震え声を発した。

「男を煽る天才か」
「はい?」
「よかった。早く結婚して。変な奴に捕まったら大変なことになるところだったよ」
「え、ええっと……」

 今まさに明人さんが超絶変人なんですけど、なんて言えないよね……。

 腕を掴まれたまま動けない状態なので、私はびくびくしながら彼を見上げた。
 そうしたら、彼は優しく微笑んで言った。

「大丈夫。無理やりしないよ。少しずつ慣らしていけばいいから」
「……明人さん」

 ああ、いつもの優しい明人さんだ。
 よかった。本性が暴力的な人じゃなくて。



※明人の心情(優しく、優しく、嫌がる彼女を堪能しよう)
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