シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
 私は底が真っ黒になった鍋を見つめて落胆した。

「煮汁がなくなるまで煮るなんて書いてないよね」
 
 と自分の失敗を咎める。

 具材には真っ黒なお焦げが見事にこびりついていて、鍋を前にしてしばし放心状態になった。
 しかし、こんなことをしている場合ではない。別のおかずを作らなければと思い、メニューの変更をする。

 え、待って。私、ご飯を炊いたっけ?
 いや、炊いていない。

 仕方がないので時短機能で急いで炊くことにしたけど、焦ったせいで米粒を壮大に床にぶちまけてしまった。
 ばらばらと、いたるところに散らばっていくその様子を見て、床にしゃがみ込む。
 ああ、隙間にも入っちゃったよ。

「最悪……」

 どうして私ってこうなんだろう。
 米粒を拾いながら自分の落ち着きのなさを反省する。
 そうしていると、スマホがメッセージの通知音を鳴らし、確認してみたら送り主は明人さんだった。

『遅くなるので食事は済ませて帰ります』

 そのメッセージを見ると急に力が抜けて、私はダイニングの椅子にへたりと座り込んだ。

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