シェフな夫のおうちごはん～最強スパダリ旦那さまに捕まりました～
「波留、どうした？」
「えっ……」

　目を開けると明人さんが目の前にいて、私は彼の腕をがっちり掴んでいたのだった。

「うなされていたようだけど、悪い夢でも見た？」

　いつもの優しい彼の声だ。
　安堵したせいか急に涙腺が緩んで私はぼろぼろ涙がこぼれた。

「ごめ、なさい……わたし、何もできなくて……」
「え？　そんなことないよ。君は休日にこの家を掃除してくれたじゃないか。俺は掃除が苦手だから助かったよ」
「でも、料理が……」
「それは気にしなくていいって言っただろ」
「鍋を焦がしてダメにしてしまいました」
「また買えばいいよ。それに、やろうとする姿勢はすごいことだよ。俺は掃除をしようなんて思わないからね」
「そ、そうですか？」

　じっと見上げると明人さんは苦笑しながら少し目を泳がせる。

「誰でも苦手なことはあるだろ。俺は君が料理を苦手なことを責めたりしない。その代わり、君も俺を責めないでくれる？」
「明人さんを責めるようなことなんて、何も……」
「俺のひとり暮らしだったときの部屋を見たら君は卒倒するよ」

　彼はそう言って困惑の表情で笑った。

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