シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
~AKITO side ⑤~
明人が風呂から出て寝室へ来たとき、波留はすでに眠っていた。彼はベッドに腰を下ろし、波留の寝顔を見つめながら笑みを浮かべると手を伸ばして彼女の髪を撫でた。
「俺に捨てられると思って怯えていたのか? 可愛いなあ、君は」
明人は満面の笑みで波留の頬や唇を指先で撫でる。それから彼は波留の耳もとに顔を近づけてぼそりと告げた。
「捨てるものか。むしろ、一生逃がさないよ」
波留はぴくりと反応して「んんっ」と熱い吐息を洩らす。
明人は恍惚の笑みを浮かべながら、波留にキスをしようとした。
そのとき、彼のスマホに通知があった。
明人は眉をひそめてそちらへ目を向ける。彼はゆっくりと波留から離れるとスマホ画面に表示された名前を見て険しい表情になった。
「やれやれ。面倒だな」
彼は頭をくしゃっと搔きながらため息をつく。
メッセージの相手は芦田利香だ。
【あたしに内緒で勝手に結婚するなんて酷いわ】
彼はそれに返事をしなかった。
代わりに冷めた目でメッセージ画面を見つめてぼそりと呟く。
「……蠅を処分しないとな」