シェフな夫のおうちごはん～最強スパダリ旦那さまに捕まりました～
　今夜はハンバーグにチャレンジしてみることにした。
　けれど私は準備にすごく時間がかかる。
　まずレシピを確認して食材を準備して、それをカットして……ここだ。カットする作業が私は異常に遅いのだ。
　しかも、この工程のあいだに余計なトラブルまで発生する。

「ううう、どうしてこんなに涙が出るの？」

　玉ねぎのみじん切りというものはなぜこれほど過酷な作業なのだろうか。せっかく上手くいってもいちいち涙を拭うたびに作業が止まってしまう。
　
「目と鼻が痛い。これ以上無理」

　とりあえず何とかみじん切りを済ませたところで明人さんが帰宅した。
　当然のことながら、まったく夕食ができていない。

「おかえりなさい」

　玄関で明人さんを出迎えると、彼は驚いた顔をした。

「え？　どうした？　何かあった？」
「涙が止まらなくて……」

　その理由を説明するためにキッチンへ行くと、彼は状況を見て眉をひそめながらぼそりと疑問を口にした。

「これは、ハンバーグを作ろうとしている？」
「さすがです。ひき肉と玉ねぎだけでわかっちゃうなんて！」
「想定する料理の中で比較的簡単だからね」

　なにげにぐさりと来ましたよ、明人さん。
　その簡単な料理でさえ、私には至難の業だというのに。

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