シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
 明人は浅井から目線をそらし、手もとの資料へ目を落とす。
 無言になった明人に、浅井は頭を掻きながら遠慮がちに言った。

「まあ、邪魔する気はないんで、嫌ならいいっすよ。そういや、今週金曜に飲み会ありますけど、行きませんよね? そんな暇ないっすよね」

 明人は目線そのままで、さらりと返答する。

「ああ、そうか。行くよ」
「行くって……ええ? 来るんですか? いつも来ないじゃん! どゆこと?」

 浅井が声を上げたと同時に周囲も「え?」という顔をした。
 明人はわざわざ周囲に聞こえるように少々声量を上げて返答する。

「うるさいな。妻の自慢がしたいだけだ」

 真面目な顔でそんなことを口にする明人に、周囲からざわめく声がする。男性陣はものめずらしそうにし、女性陣は「きゃあっ」と歓声じみた声を上げた。
 浅井が顔を引きつらせながら腕組みして言う。

「やっぱ、キャラ変してるわ。やべーわ。穂高さんじゃねぇっすわ」
「浅井、仕事しろ」
「あ、マジ顔」

 明人はそれっきり黙り込んでしまった。

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