シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
 リビングへ行くとこんがりと香ばしい匂いがじわっと鼻をくすぐった。
 その匂いの正体はフレンチトーストだ。
 明人さんは先ほどのことなどなかったかのように冷静にフライパンと向き合っている。
 テーブルにはサラダとベーコンエッグの皿が置かれている。
 彼は焼き上がったフレンチトーストを三つにカットして、大きなお皿にそれを重ねたあと、ホイップクリームを添えてからさらにメイプルシロップをたっぷりとかけた。

「美味しそう。でも太っちゃう」
「太っても可愛いよ」
「そんなこと……」
「ほんとだって。もっと触りたくなるから」

 明人さんは私の頬を軽くつねってイタズラする。

「ふへっ」
「ほら、可愛い」
「はひほはっ(あきとさっ)……」

 ひどい。これって子ども扱いじゃない!
 不貞腐れていると、彼はさらに突拍子もない行動をした。人差し指でホイップクリームをすくって私の口に突っ込んだのだ。

「んんっ……!」
「ほら、可愛いな。最高に可愛い」

 そう言って微笑を浮かべる彼の顔を見たらぞくぞくしてきた。
 やっぱり結婚生活はドキドキの連続で私の心臓がもたない。

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