シェフな夫のおうちごはん～最強スパダリ旦那さまに捕まりました～
　優菜は平気でこんな話をする。思えば女子会に行ったときも彼氏がいる子たちとそんな話になったけど、唯一経験のない私だけまるで知らない世界を傍観しているみたいだった。
　それまで優菜も私とふたりのときはその話を遠慮していたのに、私が結婚したとたん堂々とするようになった。

「彼に抱かれたい女はたくさんいたんだよ。どんな感じなんだろうなって」
「やだ。想像しないで！」

　私が真剣な顔で訴えたら、優菜は「おっ」と少し驚いた顔をした。そのあと彼女はすぐににやりと笑う。

「波留、女の顔してるよ」
「え？　どんな？」
「ふふっ、幸せオーラが溢れているね」
「もうー、からかわないで」

　少し前までこんな話をするようになるなんて自分でも予想していなかったよ。人生って何がきっかけで変わるかわからないなあって思う。

　昼休みを終えてオフィスに戻るためにロビーを歩いていた。

「ちょっとトイレ行ってくる」
「先に戻ってるよ」
「うん」

　ロビーのトイレに向かっていたら、曲がり角のところで人が出てきた。その瞬間、ぱしゃりと水が私の腕にかかった。

「あら、やだ。ごめんなさい」

　スーツ姿の女の人が手に紙コップを持っていた。

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